客船とスラム

起きがけに珍しく夢を覚えていたので書き起こしてみました。
SFっぽい展開です。

私は日本人だ。
気づくとなぜか飛べるようになっていた。
飛ぶといっても、浮いて、水かきの要領で空気をかいて思った方向に進めるといった程度だが、飛んでいるには飛んでいる。

今いるのは公館のようだ。
やけに入り組んではいるが、建物の性質としては大使館か領事館か。
ただし公務に使われそうな部屋の扉の前にはロープが張ってある。

貼り出してある部屋の見取り図を一瞥して、出口の方向へ進んだ。

ご飯をつくる炊事場のような場所に出た。
とはいっても、最低限清潔ではあるが、小部屋が連なり入り組んでいるので構造はスラム街のようだ。

ちらほらと人はいて、支度をしているようだ。忙しくなる前の時間の下準備といった雰囲気。

進もうとしていた先は中華の厨房になっており、先が繋がっているか、分からない。

迂回路を探す。

続々と労働者が集まりだしているので気がひけながら、ウロウロしているうちに、あっという間に周りは人だらけになり、活気がでてきた。

よく見回すと労働者の姿は異形の者もいる。
ある人は、トロールのような見た目で、肥大化した足が背中に貼り付いている。
ある人は、上半身裸で火を吹くコンロの前に立ち、体は傷だらけだ。

パッと見たところ、外国人が多いようだ。
半数以上が外国人の見た目か。

公館の見取り図を覚えている限りだと確かにあっち方面に出口への道があったようだが、と一人に尋ねる。
こいつは何を言っているんだ、という顔をされる。

さらに英語で尋ねる。
「ここから外へ出る道は?」
「そこから行けるよ」

…と戻り道を指される。

「こっちはどう?」と出口方向を示しながら聞くと
「厳しい人がいるからやめておいたほうがいい」と警告された。

厳しい人とは何だろう。

ここにいるのはみんな良い奴らだが、仕事に忙しいからか真剣に取り合ってくれない。

道を知っているから付いてこいと子供に声をかけられた。少年か少女か分からないが、界隈には詳しそうだ。身なりはスラム街の子供といったてい。

あまり信じられないが、あてにできるひともいないのでついていってみる。

腹が減っていたので、子供についていきながら先ほど話したチキンを大量に揚げている男に少しくれないかと聞いて、分けてもらい、子供の後を追った。

3つほど角をまがると、小さな空間に出た。
どうやら子供の遊び場のようだ。
スラムの一角には変わりないが、部屋のすみにはどこからかひろってきたガラクタがある。
子供は得意げに子供サイズにこしらえられたハンモックに上った。

悪いが遊んでいる暇はないんだ。
僕は帰らなきゃ。

遊び場は仮眠室の隣のスペースのようで、向こう側にはタンクトップの男が起き上がってきているのが見えた。

何となく、見つかりたくないので隠れる。

子供に帰らなきゃと、伝える。
「どうやって出るか分かる?」

首を横に振る。

「僕のような人を知ってる?」と聞くと頷く。
子供は隣に座った。

いやな予感だ。
薄々察していたが、ここの労働者にさせられるのか。

「君のような人はたまに来る」

こんなところにいる場合ではない。

「俺は行く」

立ち上がって出ようとすると子供が行かないでとしがみついてくる。

子供を押し離して、少し道を戻って出口の方向へ進んだ。

扉を見つけ、開ける。

畳の間。綺麗な和室に出た。

十数人の一団がおり、畳の間で記念撮影をしようとしている。
剣道の道着と胴と垂とを身につけた一群と、平装の一群。

怪訝そうに見られる。
壮年の者は事態を図りかね警戒した様子だ。

平そうの年齢層は厚く青年もいれば60,70代の老翁老婆もいる。
互いに親しそうだが、顔つきを見るに親族ではなさそうだ。

Mutual understanding だ。
従業員のていで、差し障りのない声の大きさで「失礼致します」と会釈しながら畳の間を横切り、そそくさと先へと急ぐ。

うまくいったか?

存外、何も引き止められず、向かいのふすまへとたどり着き、丁寧に畳の間を退出した。

急に開けた。

畳の間の向こうは、買い物客と思しきひとが大勢おり、ショッピングセンターか何かのような雰囲気の空間だった。

素晴らしい開放感だ。やっと帰れる。やっと帰れる実感がわいてきて、思わず浮遊した。

浮遊しながらショッピングセンターの外へ出る。

テーマパークのような場所へ出た。
ショッピングセンターはお土産屋だったのか。

開放感を体に感じながら飛びながら地図を探す。

地図を見れば出口は分かるだろうし、このテーマパークの場所も分かるだろう。

ふんわりと飛びながら、地図が置いてありそうなブースを見つけ近づく。

「綺麗だねー」と客同士で話しているのが聞こえる。

夜空は綺麗に見通せるが、街灯の必要性はあまり感じない白夜のような天気だ。

湖があるが、プールの匂いがするので人口のものだろう。客船がライトアップされている。

飛んでいるひとは自分以外に見かけないが、飛んでいる様子を見られても特に驚かれはしない。

ブースの目の前に近づいた。

地図を取ろうとしたとき、テーマパークのクルーに止められた。

「来てください」

実は飛べるようになっていたのはテーマパークが宇宙に存在するからだった。
観光客や従業員は動きやすさのため、地に足をつけているだけだったのだ。

Author: @i05

A Tokyo based software developer, a grad student belongs to a security lab at JAIST, and a husband of my mrs.