クレカを使わずに損しているのは誰か

日本の成人のうち半数以上がクレジットカードを利用したくないと考えている。そしてその理由は、思考停止と誤解にもとづいている。

昨夜、そんな報道を目にした。

内閣府は1日、クレジットカード利用に関する世論調査の結果を発表した。「クレジットカードを積極的に利用したいか」との質問に対し、「そう思わない」との回答は57・9%で、「そう思う」39・8%を大きく上回った。
朝日新聞デジタル

なお、内閣府の元資料は h28-credit.pdf から閲覧できる。

なぜクレカは日本で普及しないのか

資料によると、調査対象者がクレジットカードを利用しない理由は下記の通りだ。

  • 不便を感じない (55.4%)
  • 紛失・盗難により第三者に利用されるおそれがある (41.3%)

これらは誤解にもとづいているのだが、そのせいで日本の消費者は知らず知らずのうちに損してしまっている。

現金決済は不便である

クレカやICカード決済でわずらわされることはないはずの現金決済の不便な点をあげてみよう。

  • お釣りを渡すのに時間がかかる
  • お釣りは間違いが発生しうる
  • 銀行から引きおろさないと使えない
  • ログが残らないので家計簿をつけるか覚えておかないといけない
  • 落としたり盗まれると、戻ってくるように祈るしかない(後述)

ただ、「不便を感じない」とアンケートを答える人は本当に不便かどうかではなく「考えるのが面倒くさい」「使わないほうがいいと聞いた」「なんとなく不安」といった理由を持っているようにも読める。

クレカは現金よりも安心安全

まず、一般的なクレジットカードは紛失・盗難について現金よりも安心できる。次の通り整理してみた。

  • クレジットカード: 落とせばコールセンターに電話一本で利用停止、また、不正利用があっても返金措置がある
  • 現金: 運良く財布が戻ってくることを祈ることしかできない

犯罪者が現金を好むのはなぜか

ところで筆者は財布のスリにあった経験があるのだが、そこで起こったことは象徴的である。

犯罪者は現金だけ抜いて、財布やクレジットカードはその場に捨てていく。それはなぜか。現金はトレースが難しく、犯罪者にとって好都合だからである。

先日、日経に載っていた The Economist の記事によると、この犯罪者の特性は世界中で変わることはない。

前出のロゴフ氏は「イタリアやギリシャなどの国は統治能力が弱く、それゆえ脱税やその他の犯罪率が高い。これが高額の現金を保有する誘因となっている」と考えている。給与の一部を封筒に詰めて現金で支払う習慣の根は深いところにあるのだ。
日本経済新聞

日本のクレカ手数料は高いまま

実は現金の決済コストはクレカなどに比べて高い。

消費者は現金にはコストがかからないと思うかもしれないが、銀行や小売店にとってはそうではない。現金は数えたり、まとめたり、運んだりする必要がある。汚れを落とし、時には交換する必要がある。さらに、偽造がないか監視し、保管して、窃盗にも備えなければならない。国内総生産(GDP)の0.5~1%前後に当たる金額が現金の管理に毎年費やされているのだ。
日本経済新聞

事業者の都合なんて知ったこっちゃない?
しかしこの高コストな決済手段のつけは消費者に転嫁される。たとえ現金決済派であってもそのつけからは逃れられない。

クレカ普及しない
→クレカ会社のマージン比率下がらない
→クレカ利用者だけに負担させられない規約なので店は商品代金に上乗せる
→現金派も割高のマージンを間接的に支払う

日本のクレジットカード手数料は3%〜5%といわれているが、驚くべきことにEUはその10分の1以下だ。

国による差をなくすため、欧州連合(EU)の欧州委員会は2015年12月、カード決済の手数料に上限を設けた。デビットカード決済については0.2%、クレジットカード決済の 場合は0.3%だ。
日本経済新聞

日本の消費者は、この割高な手数料を支払続けることになる。
思考停止と誤解が私たち個人や日本社会にもたらしている損失は小さくないだろう。

Author: @i05

A Tokyo based software developer, a grad student belongs to a security lab at JAIST, and a husband of my mrs.